Photo: Bernard Bisson/ JDD / SIPA, 2011, Paris, Courtesy: Home Movie Factory Association
Photo: Bernard Bisson/ JDD / SIPA, 2011, Paris, Courtesy: Home Movie Factory Association

ミシェル・ゴンドリー(1963ー)は、数々の独創的な長編映画や短編映画、ミュージック・ビデオの作り手として、国際的な賞をいくつも獲得しているフランス出身の映画監督。音とシンクロして流れる車窓景色、劇中劇のごとく舞台装置を大胆に使った画面など、奇抜な表現で知られるゴンドリーですが、彼のイマジネーションの根底にあるのは、ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』(1902)に見るようなハンドメイドの映像魔術です。莫大な予算や特別な技術がなくても誰でもアイディア次第で映像作家になれる、そんなメリエスの考えをゴンドリーは『僕らのミライへ逆回転!』(2008)という映画で最も情熱的に表現しています。これは、レンタル・ビデオ屋の店員たちが名作映画を有り合わせの材料でリメイクしてゆくコメディです。作中に登場する段ボール製『ロボコップ』や『ゴーストバスターズ』は、見るもお粗末…だけどレトロで新鮮な魅力を放っています。本展は、そんな世界で活躍する映像作家としての顔と、アマチュア映画愛好家としての顔を持ち合わせるゴンドリーの魅力に、「ホームムービー・ファクトリー」「Around the World in 19 Videos」の2部構成で迫っていきます。

第1部「ホームムービー・ファクトリー」は、ゴンドリーが考案した独自の映画制作方法で、来場者が実際に映画作りに参加することができる体験型展示です。この展示は2008年にニューヨークのダイチ・ギャラリーで開催されて以来、モスクワ、サンパウロ、パリなど各都市に巡回してきました。この度の東京都現代美術館での開催はアジアで初となります。
第2部「Around the World in 19 Videos」では、ユニークなアイディアの詰まったミュージック・ビデオの傑作をインスタレーション形式で紹介。伝説的なダフトパンクの「アラウンド・ザ・ワールド」から、詩情あふれるビョークの「ハイパーバラッド」、「バチェラレット」、「ヒューマン・ビヘイヴィアー」、最新作メトロノミーの「ラブレターズ」まで、新旧19の名作をお見せします。秘蔵のドローイングや映画の中で使われた小道具も展示いたします。

ゴンドリーの遊び心に満ちた映像魔術の世界を歩き回る「Around the World in 19 Videos」、そして彼の映像制作の原風景を追体験できる「ホームムービー・ファクトリー」。2つのゴンドリーワールドから、次世代クリエイターたちに影響を与え続ける気鋭の映画監督の創造の源を探ってみましょう。

展覧会のみどころ


■12の映画セットで、世界にひとつだけの物語をつくろう
「ホームムービー・ファクトリー」は、10人ほどのグループで脚本からキャスティング、演出、撮影まですべて3時間で行うワークショップ型の展示です。喫茶店、路地裏、電車、森、オフィスなど、あなたの想像力を刺激する12の映画セットで、その日出会った人々と、一期一会のオリジナル短編映画を作りましょう。小道具や衣装も駆使すれば、ロマンチックな恋愛映画からスリル溢れるサスペンスまで物語の可能性は無限大です。映像機器の知識や演技経験がなくても大丈夫、インストラクターが創作活動をサポートします。撮影後には上映会が用意されているので、みんなで感想を言いながら楽しんでくださいね。セット見学や、他の人が作った作品の鑑賞のみも歓迎です。
☆ワークショップは定員制、毎週水・土・日・祝日開催

■アイディア溢れるミュージック・ビデオの迷宮へ
日常風景も白昼夢のように変えてしまうゴンドリーの映像魔術。遠近法や鏡、ストップモーションや逆再生を利用したシンプルなトリックで、鑑賞者はあっという間に幻想の世界に引き込まれてしまいます。5分間程度の映像に物語とアイディアを凝縮したミュージック・ビデオ作品は、ゴンドリーの映像魔術の結晶とも言えるでしょう。本展では代表的な19作品を、ゴンドリー自ら考案したインスタレーションでご紹介。19のスクリーンを辿って映像の迷宮を歩きだしたら、あなたの創造意欲にも火がついてしまうかも知れません。

■マニア必見!ゴンドリー映画のアイテムが初来日
最新作『背の高い男は幸せ?』(2013)のためのドローイングや、『ムード・インディゴ:うたかたの日々』(2013)に登場する睡蓮の花や摩訶不思議な料理、『恋愛睡眠のすすめ』(2006)の1秒タイムマシーンなど、映画で実際に使われた小道具を展示します。奇妙奇天烈でロマンチックなガジェットたちに想像を膨らませれば、ゴンドリーマニアはもちろん、ゴンドリーを知らない人でも楽しめること間違いなしでしょう。

■ミシェル・ゴンドリー
長編映画監督であり、テレビCMや、数々の賞に輝くミュージック・ビデオを手がけてきたミシェル・ゴンドリー。デジタルとアナログ、空想と現実、ユーモアと切なさを融合させる彼のアイディアや夢は、人々を惹きつけてやまない。長編映画の代表作に、ボリス・ヴィアン原作『ムード・インディゴ:うたかたの日々』(2013)、『グリーン・ホーネット』(2011)、『ウィ・アンド・アイ』(2012)、 『僕らのミライへ逆回転』(2008)、『恋愛睡眠のすすめ』(2006)、『ブロック・パーティ』(2005)、『エターナル・サンシャイン』(2004)、『ヒューマン・ネイチャー』(2001)など。現在『背の高い男は幸せ?:ノーム・チョムスキーとのアニメーション会話(Is the Man Who Is Tall Happy ?)』を世界各地で上映中。また、ビョーク、ホワイト・ストライプス、ザ・ローリング・ストーンズ、ベック、ダフト・パンク、ケミカル・ブラザーズ、フー・ファイターズ、シェリル・クロウ、カイリー・ミノーグ、ポール・マッカートニーなど、名だたるアーティストたちのミュージック・ビデオを手掛け、数々の賞を受賞している。最新作はメトロノミーの「ラブレターズ」。(2014年7月現在)

展覧会情報
展覧会名:「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」展
会期:9月27日(土)―2015年1月4日(日)
休館日:月曜日(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日、11月4日、11月25日
年始年末休館:12月28日-2015年1月1日
開館時間 10:00-18:00(入場は17:30まで)
会場:東京都現代美術館
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館、ホームムービー・ファクトリー協会
後援:在日フランス大使館 アンスティチュ・フランセ日本
特別協力:TOKYO FM
協力:NECディスプレイソリューションズ株式会社/本田技研工業株式会社/カンディハウス/アニエスベー/エスモード ジャポン/日本大学芸術学部映画学科
観覧料:一般 1,000円/大学生・65歳以上 800円/ 中高生 600円/ 小学生以下 無料
*「ホームムービー・ファクトリー」のみ無料エリアとなります。*20名以上の団体は2割引き *本展チケットでMOT
コレクションもご覧になれます。
*身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添者(2名まで)は無料。